地震でケガを防ぐ家具対策
地震によるケガのうち、3〜5割は「家具の転倒・落下・移動」が原因と言われています。しかし、すべての防災グッズを一度にそろえなくても、「物を減らす」「配置を変える」「必要な家具から固定する」という3つの流れを押さえるだけで、自宅の安全度は大きく変わります。
この記事では、部屋のレイアウト見直しから固定器具の正しい使い分け、さらに長周期地震動への備えまで、今日から始められる6つのステップに分けて解説します。難しい専門知識は不要。初めての人でも手順通りに進めれば、確実に安全性が高まります。
1. 「物を減らして」安全スペース
最初のステップは、実は家具固定よりも前にやるべきことです。それは、置きすぎている物を減らして部屋をすっきりさせること。具体的には、納戸やクローゼットなどの収納にできるだけしまうことを意識し、寝室や子ども部屋には大型家具をできるだけ置かないようにします。また、ベッドのそばに背の高い家具を置かないようにするだけでも、安全性はぐっと高まります。
そして何よりおすすめなのが、何も置かない“安全スペース”を1か所つくっておくことです。緊急地震速報を聞いたとき、その場所に移動できれば、家具から離れて身を守りやすくなります。
2. 避難経路をふさがない
次に見直したいのが、家具の配置(レイアウト)です。避難経路を死守するという視点で、玄関前や廊下、出入り口近くには家具を置かないようにし、壁面収納や造り付け収納を積極的に活用します。出入り口付近に背の高い家具を置かないようにすることも大切です。
配置を考えるときは、「この家具が倒れたら、ドアは開くか?」という問いかけをしながら確認すると、安全性をイメージしやすくなります。また、揺れが大きくなるとタンスの引き出しが勢いよく飛び出したり、食器棚の扉が開いて中身が落ちたりすることがあります。こうした動きが避難の妨げにならないよう、扉や引き出しが避難動線側に飛び出さない配置を意識しておくと、より安心です。
3. 家具の位置を見直す
家具は、重心が低いほど倒れにくいという特徴があります。重い本や陶器類、家電などは下の段にまとめて置き、棚の上段や高い位置には軽い物だけを置くようにします。また、家具の上に物を積み上げる習慣はできるだけやめ、スッキリさせておくことがポイントです。
新しく家具を購入する場合は、背が低めのものを選ぶと、もともとの重心が下がりやすく安全性が高まります。ただし、背が低い家具であっても、揺れによる移動や転倒がゼロになるわけではないので、滑り止めや固定は必要だと考えておきましょう。
4. 家具を固定する
レイアウトが整ったら、いよいよ家具の固定です。基本は、「ネジ固定」と「補助器具」を組み合わせて考えるのがおすすめです。
まず、L字金具で壁に固定する方法があります。本棚や食器棚、タンスなどの大きな家具に有効で、家具と壁を金具と木ネジでしっかり固定します。下向きに取り付けるタイプは、特に強度が高いとされています。
設置するときは、柱や桟などしっかりした下地に取り付けること(石膏ボード部分だけだと強度不足になりやすい)、壁材の種類によって適した固定方法が変わるため事前に場所をチェックしておくこと、賃貸住宅の場合は原状回復のルールや管理会社の方針を確認してから作業することを意識しておくと安心です。
5. 転倒・移動防止グッズの活用
背が低い家具でも、動きやすい家具は地震時に大きく移動して危険になることがあります。特に注意したいのがキャスター付き家具とテーブルです。
キャスター付き家具は、使用していないときはキャスターロックをかける習慣をつけ、定位置が決まっているものは下皿やストッパーを使って動きにくくしておくと安心です。ほとんど動かさないワゴンなどは、思い切ってキャスターを外してしまうという方法もあります。
テーブルやイスなどについては、カーペットの上であれば滑り止めシートを活用し、フローリングの場合は脚用の滑り止めや粘着マットを組み合わせると、揺れによる移動を抑えやすくなります。
6. 長周期地震動に注意するもの
長周期地震動では、揺れがゆっくり大きく、しかも長時間続きます。そのため、つり下げ式照明や大型の観賞魚水槽、背の高い家具などは揺れ幅が大きくなりやすく、倒れたり落下したりする危険性が高まります。
つり下げ照明は、複数のワイヤーやチェーンで天井とつなぎ、揺れ幅を小さくする工夫をしておくと安心です。大型水槽は、専用の金具やベルトで台や壁に固定し、必要に応じて底面に粘着マットを併用すると安定しやすくなります。水がこぼれると感電や腐食、転倒の原因にもなるため、優先して対策したいポイントです。
まとめ
- まずは物を減らし、安全スペースをつくる。
- 玄関や廊下など、避難経路に家具を置かない。
- 重い物は下へ、家具の位置と高さを見直す。
- L字金具や下地を使った固定に加え、滑り止めなども組み合わせて家具をしっかり固定する。
- キャスター付き家具やテーブル、照明・水槽など「動きやすいもの」は優先して対策する。
完璧を目指さなくても大丈夫です。「寝室 → リビング → 玄関」のように、よく過ごす場所から少しずつ対策していけば、無理なく着実に家の安全性を高めることができます。

