雪害から身を守るためには?
雪が降りそうな日や、降った翌日に「運転や外出はどこが危ない?」「雪かきは何に注意すればいい?」と迷うことはありませんか。 雪の災害は、雪崩や除雪中の事故のように雪の多い地域で起こりやすいものだけでなく、 路面の凍結による交通事故や歩行中の転倒のように、雪が少ない地域でも起こりうるものです。 この記事では、首相官邸の防災情報をもとに、よくある場面ごとに危険のポイントと、備え方・身の守り方をまとめます。
目次
1. 除雪中の事故:屋根・落雪・水路・除雪機
首相官邸の防災情報では、雪による事故の死者の多くは除雪中の事故によるものだと紹介されています。 屋根の雪下ろしや雪かきなどの作業中に発生し、高齢者の比率が高いことが特徴とされています。
よくある事故
- 屋根の上からの転落(雪が滑ってバランスを崩す場合など)
- 軒下での除雪中に落雪で埋まる・直撃を受ける
- 融雪槽などの水路への転落(発見まで時間がかかる場合がある)
- 除雪機の雪詰まりを取り除こうとして巻き込まれる
- 寒い屋外での重労働で体調を崩す
除雪作業前に確認しておきたいポイント
- 家族や近所に声をかけ、複数人で作業できる形にしておく
- 建物のまわりに雪を残すなど、落雪や転落の危険を意識した段取りにする
- 晴れの日でも、屋根雪がゆるむことがある前提で慎重に進める
- はしごの固定など、道具の安全確認を先に済ませる
- 除雪機はエンジンを止めてから雪詰まりを確認する
- 低い屋根でも油断しない
- 作業開始直後と疲れが出る頃は特に慎重にする
- 命綱やヘルメットなど、身を守る装備を用意する
- 命綱や除雪機など用具は、こまめに手入れ・点検する
- 連絡手段として携帯電話などを携行する
空き家の除雪が行われず危険な状態になっている場合には、市町村に相談できる旨も紹介されています。 地域の状況に合わせて、無理のない体制を考えておくと安心につながります。
2. 車による雪道の事故:凍結と視界不良への備え
降雪時や降雪後は、路面の凍結や、吹雪などによる視界不良に注意が必要だとされています。 雪が降った後の早い時期(おおよそ24時間以内)や、夜間・朝方、日陰などは、凍っているように見えなくても滑りやすい路面があるとして注意が呼びかけられています。
凍結しやすい場所
- 信号交差点(発進と停止の繰り返しで滑りやすくなる場合がある)
- 橋の上(ほかが凍っていなくても局所的に凍結する場合がある)
- トンネルなどの出入口(日陰になりやすく凍結する場合がある)
- 冷え込む夜間や朝方、日陰(見た目で分かりにくい凍結に注意)
雪道運転のポイント
- 坂道は、事前に速度を落として走行し、下りはエンジンブレーキを使う考え方が示されている
- カーブは、手前で十分に減速してから進入し、カーブ中は一定の控えめな速度を保つ
- ブレーキは普段より手前から、やさしく踏むことが紹介されている
- 吹雪などで視界が悪いときは、ライト点灯・スピード控えめ・車間距離を十分にとる
- 雪がライトやワイパーに付いたら、道路から離れた安全な場所で落とす
車内に備えておきたい装備
- タイヤチェーンなど、雪道走行に必要な装備
- 防寒具、手袋、毛布、使い捨てカイロなどの寒さ対策
- スコップ、懐中電灯、ラジオ、非常用の水や食料など、待機に備えるもの
雪のない地域から積雪地域へ行く場合も、慣れない雪道で思わぬハプニングが起こりうるとして、基礎知識と準備の重要性が紹介されています。
3. 歩行中の雪道の事故:滑りやすい場所と歩き方
冬の転倒は、豪雪地帯に限らず、雪が少ない地域でも積雪や凍結を原因として多く発生するとされています。 滑りやすい場所をあらかじめ知っておくと、外出時に注意を向けやすくなります。
滑りやすい場所
- 横断歩道の白線の上(薄い氷膜で滑りやすい場合がある)
- 駐車場の出入口など、車の出入りがある歩道(タイヤで磨かれ滑りやすい場合がある)
- バスやタクシーの乗り場(踏み固められて滑りやすい場合がある)
- 坂道(下りのほうが滑って転びやすいとされている)
- ロードヒーティングの切れ目(段差や部分的な凍結に注意)
雪道を安全に歩くポイント
- 歩幅を小さくして、そろそろと歩く(「ペンギン歩き」が紹介されている)
- 体の重心をやや前に置き、靴底全体を路面につける意識を持つ
- 靴底が滑りにくい履物を選ぶ
- 転んだときに備えて帽子や手袋などを身につける工夫も紹介されている
- 両手をポケットに入れたまま歩くと転倒時に危険が増えるため、手が使える状態を意識する
また、屋根の上の雪や氷が落ちてくることがあるため、歩くときは上にも目を配ることが紹介されています。特に暖かい日は注意が必要とされています。
4. 雪のレジャーの事故:装備と判断のポイント
雪のレジャーでの事故は、油断や状況判断・認識の甘さから起こるものが目立つと説明されています。 体調管理が万全でない、天候変化やトラブルに対応する装備が不十分といったことが、事故につながりやすい特徴として挙げられています。
起こりやすい事故
- スキーやスノーボードでの転倒・滑落、人や立木への衝突によるけが
- コース確認が不十分なまま立入禁止区域へ入り、迷い・遭難につながる
- 山岳地域では携帯電話が確実に通話できるとは限らないことがある
雪のレジャー前に整えておきたいポイント
- いきなり激しい運動をせず、体を慣らしながら楽しむ
- 体調が優れない場合は、運動を控える選択肢も持っておく
- 事前に気象状況や天気予報を確認し、急変時は無理な行動を控える考え方が示されている
- 現地の係員の指示やアドバイスを参考にする
- 自分の能力に合う範囲で楽しみ、周囲にも気を配る
また、気を付けていても雪崩が突然発生する場合があるとして、雪崩の知識を身につけ、新雪が多く積もった後は雪崩が起きやすい場所を避けること、埋没に備えて電波発信機などを所持することも紹介されています。
5. 雪崩による事故:起こりやすい条件と前兆
雪崩は、気温や積雪の状態、斜面の地形などが重なることで起こりやすくなるとされています。 首相官邸の防災情報では、雪崩が発生しやすい条件や、斜面に現れる前兆現象が整理されています。
雪崩が起こりやすい条件
- 気温が低く積雪が多い中で、短期間に多量の降雪があったとき
- 急傾斜で、雪庇や吹きだまりができやすい場所
- 吹雪や強風が伴うとき
- 過去に雪崩が発生した斜面
- 春先や降雨後、気温が上がるとき
- 斜面に積雪の亀裂ができている場所
主な前兆現象
- 雪庇(尾根から雪が張り出している状態)
- 巻きだれ(雪崩予防柵などから雪が張り出している状態)
- 斜面が平らに見える(地形が分からないほど雪が積もっている)
- スノーボール(雪のかたまりが斜面を転がり落ちてくる)
- クラック(斜面に裂け目のような亀裂がある)
- 雪しわ(シワ状の模様が見える)
普段から確認しておきたい情報
- 市町村のハザードマップなどで、地域の危険箇所を把握しておく
- 気象庁が発表する「なだれ注意報」などの気象情報が出ていないか確認する
- 自治体から発信される情報もあわせてチェックする
まとめ:場面ごとの危険を知ると、冬の行動が選びやすくなる
雪の災害は、雪崩や除雪中の事故のように雪の多い地域で起こりやすいものだけでなく、 路面の凍結による交通事故や歩行中の転倒のように、雪が少ない地域でも起こりうるものです。 先に「どこが滑りやすいか」「運転で凍結しやすい場所」「除雪で起こりやすい事故」を共有しておくと、 雪の日の行動を落ち着いて選びやすくなります。

